看護学校講義:司法書士が伝える「対話の力」とソクラテスの問答法

昨日、看護学校にて「対話の力」をテーマにした講義を担当させていただきました。

司法書士と看護師。一見すると接点がないように思えますが、実はどちらも「相手の真の意思(本当の気持ち)を理解する専門職」であるという共通点があります。

今回の講義では、法律の知識を超えた「対話の本質」について、学生の皆さんと共に考えました。

1.遺言書作成の現場で見える「言葉の裏側」

まず、「Bさんの遺言書作成」の事例を紹介しました。

Bさんは当初、「長男には何もやりたくない」と強く希望されていました。

しかし、対話を重ねていくと、その怒りの裏には「喧嘩別れした息子と本当は仲直りしたい」という切ない本音が隠されていたのです。

ここで必要なのは法律知識ではなく、相手の中にある答えを引き出す「ソクラテスの問答法(産婆術)」です。

答えを提示するのではなく、問いを投げかけ、相手自身が自分の真実の願いに気づくのを待つ。

このプロセスを経て、Bさんは長男との関係を修復し、納得のいく遺言書を作成することができました。

2.看護現場への応用:患者さんの「治療をやめたい」に向き合う

ワークショップでは、この問答法を看護の現場に置き換えて実践しました。

シナリオは、がん治療中の患者さんが放った「もう治療をやめたい」という一言です。

学生さんたちには「看護師役」と「患者役」に分かれ、ロールプレイを行ってもらいました。

患者役を演じた学生さんからは、「問いかけ次第で、副作用の辛さや家族への気兼ねといった『本当の理由』を話しやすくなった」という気づきの声が上がりました。

3.「なぜ」を掘り下げ、自分を支える

最後に、ビジネスや日常でも使える「なぜなぜ分析」を紹介しました。これは他者との対話だけでなく、自分自身への問いかけにも有効です。

「なぜ看護師を目指したのか?」という問いを深めることで、困難に直面したときに自分を支えるメンタルの土台となります。

講義を終えて

司法書士も看護師も、相手の言葉をそのまま受け取るのではなく、その背景にある「家族の物語」や「生きてきた証」に耳を傾ける姿勢が求められます。

学生さんたちが明日からの実習で、患者さんの「沈黙」や「言葉の端々」に宿る本当の気持ちを、ソクラテスのように優しく引き出してくれることを願っています。