第三者割当増資 | 組織形態・引受手法 完全比較ガイド

第三者割当増資:実務・法務マトリクス

組織形態(取締役会の有無)と、引受手法(総数引受と申込・割当)の組み合わせを整理しました。
実務で最もミスの多い「承認主体」と「通知期間」を正しく把握しましょう。

1. 取締役会の有無による決議権限の差

項目 取締役会あり (設置) 取締役会なし (非設置)
募集事項の決定 取締役会決議 株主総会 (特別決議)
有利発行の承認 株主総会 (特別決議) 株主総会 (特別決議)
総数引受契約の承認 取締役会決議 株主総会 (特別決議)
※ 非公開会社(譲渡制限会社)を前提としています。公開会社の場合は募集事項の決定権限が異なります。

2. 引受手法の比較:総数引受 vs 申込・割当

特定の第三者に割り当てる場合でも、法律上の構成は2パターン存在します。

比較項目 総数引受契約 (法205条) 申込と割当 (法203, 204条)
法的手続き 会社と引受人が一通の契約を締結 引受人の申込 → 会社の割当決定
既存株主への通知 完全に不要 (公示義務なし) 期日の2週間前までに通知・公告が必要
実務の手間 極めて簡便。最短当日完了。 通知期間を待つため最低2週間かかる。
登記添付書類 総数引受契約書 株式申込書 + 割当決定の議事録

【実務の鉄則】

特定の投資家に割り当てる実務では、通知期間をカットできる「総数引受契約」が99%選択されます。
「申込と割当」ルートは、公募増資のように不特定多数に申し込ませ、誰に何株割り当てるか後で決める場合にのみ使用します。

3. 【決定版】ケース別・登記添付書類リスト

設置 総数引受
  • ✔ 取締役会議事録(募集事項決定&契約承認)
  • ✔ 総数引受契約書
  • ✔ 払込証明書 + 通帳コピー
  • ✔ 資本金の額の計上に関する証明書
  • ✔ 株主総会議事録(有利発行時のみ)
非設置 総数引受
  • ✔ 株主総会議事録(特別決議:決定&契約承認)
  • ✔ 株主リスト(法務局指定様式)
  • ✔ 総数引受契約書
  • ✔ 払込証明書 + 通帳コピー
  • ✔ 資本金の額の計上に関する証明書

4. 手続き選択における「追加の落とし穴」

① 総数引受契約の「契約日」の整合性

総数引受契約は、原則として「募集事項の決定決議」の**当日または後日**に締結する必要があります。決議日より前の日付で契約が締結されていると、会社法上の承認手続きを経ていない契約とみなされ、登記が却下されるリスクがあります。

② 「申込と割当」ルートでの失念:株主への通知義務

総数引受契約を使わない場合、既存株主に「新株を発行するから、差し止めたいなら言ってください」という趣旨の通知(または公告)を2週間前までにしなければなりません。これに1日でも足りないと登記は通りません。

③ 取締役会なしの場合の「株主リスト」

取締役会がない会社では、増資の意思決定が株主総会であるため、登記申請に「株主リスト」の添付が必須です。取締役会がある会社でも、有利発行などで総会を開いた場合は同様にリストが必要になります。

最終確認:どのルートで進めますか?

Speed Priority

総数引受契約 + 招集省略同意書
→ 最短1日で登記準備完了

Compliance Check

議事録に「契約の承認」文言あり
→ 登記却下防止の最重要点

Payment Check

払込期日の翌日から2週間
→ 登記申請期限の厳守

Full Matrix of Equity Issuance Procedures / Board vs No-Board / 205 vs 203,204

※本サイトの手続きや文言はあくまで参考であり、内容を保証するものではありません。

会社形態や、時期などによって、必要な書類や、内容は変わってきます。

必ず専門家を入れて進めてください。