遺言

遺言とは

遺言とは、被相続人(亡くなった方)が生前に自分の死後「どの相続財産を誰に、どのような形で、どれだけ渡すか」という最終の意思表示をするものです。

その意思を「遺言書」として書面で残すことで、その内容が尊重されます。

遺言を作成する場合、以下の点に注意が必要です。

  • 遺言書の形式や内容を正しく作成する
  • 遺言書を安全に保管する
  • 遺言書の存在を知らせておく

一般的な方式の遺言

「一般的な方式の遺言」についてご説明いたします。

他にも「特別な方式の遺言」があります。

(特別方式遺言とは、遺言者の死亡が迫っている場合や、遺言者が一般社会と隔絶した環境にあるため、普通方式による遺言ができない場合に限って認められる遺言の方式です。)

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遺言能力

遺言能力

遺言には、共通要件として「遺言能力」を有していることが必要です。

遺言能力がないと判断された場合、他要件を満たしていても遺言自体無効となってしまいます。

遺言能力とは

遺言能力とは、遺言の内容を理解し、遺言の結果を弁識しうるに足りる意思能力をいいます。

遺言者は、遺言能力がなければ、その者が作成した遺言は有効とは認められません。また、遺言能力は、遺言の作成時に存在しなければなりません。

遺言能力の有無は、①精神上の障害の存否・内容・程度、②年齢、③遺言前後の言動や状況、④遺言作成に至る経緯(遺言の動機・理由)、⑤遺言の内容、⑥相続人又は受遺者との人的関係、などが考慮されて判断されます。

具体的には、遺言内容が複雑な場合や、遺言者の遺言の動機や理由が不合理である場合、遺言作成の時期が短い場合、遺言者の精神状態が不安定である場合などには、遺言能力が欠如しているのではないかと疑われることがあります。

遺言能力が争われた場合、裁判所は、これらの要素を総合的に判断して、遺言能力の有無を判断します。

なお、遺言能力が欠如している場合でも、遺言内容が遺言者の真意に基づくものであれば、遺言者の意思を尊重するために、遺言の一部を有効とすることも考えられます。

要件

遺言能力の要件は、次の2つです。

  • 満15歳以上であること

満15歳以上であること。

未成年者のうち、15歳以上で通常の判断能力のある場合は遺言を行うことができます。

  • 意思能力があること

意思能力とは、自分の意思を形成し、その意思に基づいて行動することができる能力をいいます。

遺言能力における意思能力とは、遺言の内容を理解し、遺言の結果を弁識しうるに足りる意思能力をいいます。

具体的には、次の3つの要素が考慮されます。

  • 遺言の内容を理解する能力
  • 遺言の結果を弁識する能力
  • 自分の意思に基づいて遺言を作成することができる能力

遺言の内容が複雑な場合や、遺言者の遺言の動機や理由が不合理である場合、遺言作成の時期が短い場合、遺言者の精神状態が不安定である場合などには、意思能力が欠如しているのではないかと疑われることがあります。

遺言能力が争われた場合、裁判所は、これらの要素を総合的に判断して、遺言能力の有無を判断します。

なお、意思能力が欠如している場合でも、遺言内容が遺言者の真意に基づくものであれば、遺言者の意思を尊重するために、遺言の一部を有効とすることも考えられます。

条文(民法)

第961条 15歳に達した者は、遺言をすることができる。

第962条 第5条第9条第13条及び第17条の規定は、遺言については、適用しない。

第963条 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

遺言の種類

種類

遺言書の種類には、大きく分けて以下の3種類があります。

  • 自筆証書遺言  遺言者が全文自書し、日付と氏名を記入し、押印したもの。
  • 公正証書遺言  遺言者が公証人へ口頭で遺言の内容を伝え、公証人が遺言書を作成し、保管するもの。
  • 秘密証書遺言  遺言者が自書した遺言書を封印し、2人以上の証人に署名してもらったもの。
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それぞれの要件と、メリット・デメリット

要件を満たさない場合、無効となります。

それぞれのメリット・デメリットを見比べてご自身にあったものを選びましょう。

自筆証書遺言

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押すことで作成できる遺言の方式です。

要件

  • 全文自書(財産目録以外)

遺言書の全文を、遺言者本人が自筆で書く必要があります。

遺言書に添付する財産目録は、パソコン入力等可能です。(※別途要件有〈民法第968条2項〉)

  • 日付

遺言書を作成したときに、その日付を正確に自筆で書く必要があります。

西暦和暦どちらでも可能です。

  • 氏名

遺言者本人の氏名を自筆で書く必要があります。

正確な人物特定のため、戸籍上の氏名を記載し、住所も合わせて記載することが望ましいです。

  • 印鑑

遺言書に印鑑を押す必要があります。印鑑は、認印でも構いませんが、スタンプ印は避けてください。

正確な意思表示としては、朱肉を使い、実印を押印することが望ましいです。

また、遺言書に訂正や加除を行う場合は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 訂正や加除は、遺言者本人が自書で行う
  • 訂正や加除は、訂正印や加除印を押して行い、訂正や加除前の文言も残す

これらの要件を満たしていない遺言書は、無効となる可能性があります。

メリット

  • 作成が簡単で費用がかからない

自筆証書遺言は、遺言者本人が自筆で書くだけで作成できるため、費用がかかりません。また、公正証書遺言のように、公証役場で作成する必要がないため、作成の手間もかかりません。

  • 内容を秘密にできる

自筆証書遺言は、遺言者本人が保管するため、内容を秘密にできます。

  • 遺言者の意思を尊重できる

自筆証書遺言は、遺言者本人が自由に自分の意思を書き残すことができます。

デメリット

  • 要件を満たさないと無効になる

自筆証書遺言は、形式要件が厳しく定められています。要件を満たしていない遺言書は、無効となる可能性があります。

  • 遺言書が発見されない可能性がある

遺言者本人が遺言書を保管するため、遺言書が発見されない可能性があります。

  • 検認が必要になる

相続開始後、家庭裁判所での検認手続きが必要になります。検認手続きには、時間と費用がかかります。

条文(民法)

第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第978条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

公正証書遺言

公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言者が公証人に対して口頭で遺言の内容を伝え、公証人がその内容を筆記し、遺言者及び証人の立ち会いの下で読み聞かせ、署名・押印した遺言書です。

要件

  • 遺言者が遺言の内容を公証人に口授すること

遺言の内容は、遺言者から公証人に口頭で伝えなければなりません。手振りや身振りなどの動作によって伝えることは原則として禁止されています。

  • 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせること

公証人は、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせます。

  • 公証人が上記の方法に従って作成したものである旨を付記してこれに署名し、押印すること

遺言者と証人は、署名し、押印します。

  • 以下の欠格事由に該当しない証人2人以上の立会い
  • 未成年者
  • 推定相続人や受遺者・これらの配偶者や直系血族
  • 公証人の配偶者や四親等内の親族・書記および使用人

メリット

  • 遺言の有効性が高い

公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を正確に反映した遺言書を作成するため、形式要件が厳格に定められています。そのため、遺言の有効性が高く、相続手続きがスムーズに進む可能性が高くなります。

  • 公証役場で保管されるため、紛失や改ざんのリスクが少ない

公正証書遺言の原本は、公証役場で保管されるため、紛失や改ざんのリスクが少ないです。

  • 検認が不要である

公正証書遺言は、公証役場で作成された公文書であるため、検認が不要です。検認とは、遺言書の原本が有効なものであることを確認するための手続きですが、公正証書遺言の場合は、この手続きが省略されるため、時間と検認費用を省けます。

  • 文字が書けない方も利用できる

内容は口頭で公証人に伝え、署名は公証人が代書できるため、自筆できない方でも利用できます。ただし、遺言能力等要件は満たす必要があります。

  • 出張してもらえる

ご病気などで、公証役場まで行けない場合、自宅や病院まで出張してもらうことができます。ただし、出張費用がついかされます。

デメリット

  • 作成に手間と費用がかかる

公正証書遺言を作成するには、公証役場に出向き、遺言の内容を公証人に伝える必要があります。また、公証人への手数料や証人への謝礼など、作成に手間と費用がかかります。

  • 遺言内容が漏れる可能性がある

少なくとも公証人と、証人2人には遺言の内容を知られてしまいます。公証人も証人にも守秘義務・秘密保持義務が課せられるため、通常、外部に漏れることはありません。

  • 訂正や、撤回にも費用がかかる

訂正や、一度提出した遺言書を撤回したい場合も費用がかかるため、内容をよく考えてから利用することをおすすめします。

公正証書遺言→自筆証書遺言への新たな書換をした場合、日付の新しいものが有効となりますが、要件不備を起こしていたり、そもそも自筆証書遺言が見つからず、公正証書遺言の内容で相続手続きが進んでしまうことも考えられるため、おすすめしません。

条文(民法)

第969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

第970条 公証人は、遺言者が遺言の趣旨を口授したときは、直ちにこれを筆記しなければならない。

第971条 公証人は、遺言者の口述を筆記したときは、これを遺言者及び証人に読み聞かせなければならない。

第972条 公証人は、遺言者及び証人がその内容を認めたことを確認したときは、上記の方法に従って作成したものである旨を付記してこれに署名し、押印しなければならない。

第973条 公証人は、公正証書遺言の作成の事務を処理するときは、公正証書遺言の原本を作成しなければならない。

第973条の2 公正証書遺言の原本は、公証役場に保管しなければならない。

第973条の3 公正証書遺言の原本は、遺言者が死亡したときは、遺言執行者又は相続人がこれを請求することができる。

秘密証書遺言

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言者が遺言内容を秘密にしたうえで遺言書を封じ、遺言書の存在だけを公証人に証明してもらう遺言の方式です。原本は保管してもらえません。

要件

  • 遺言を作成し、これに署名押印すること

自書する必要はないため、パソコンでの作成も可能です。(遺言書に署名押印は必要)

  • 遺言書を封入し、遺言書の押印に使用したものと同一の印章を用いて封印すること

秘密証書遺言は、遺言者が遺言書を封入し、遺言書の押印に使用したものと同一の印章を用いて封印します。

  • 公証役場で、氏名、住所を申述し、公証人、遺言者、証人がそれぞれ封紙に署名押印すること

遺言者は、公証人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自らが遺言者である旨と遺言書本体の筆者の氏名・住所を申述し、公証人に、提出された日付と遺言者の申述を封紙に記載をしてもらい、公証人、遺言者、証人がそれぞれ封紙に署名押印をします。

メリット

  • 内容を秘密にできる

秘密証書遺言は、作成後封印して公証人に提出するため、遺言書の内容が第三者に知られることがないというメリットがあります。これは、遺言者の希望や遺言書の内容によっては重要なメリットとなる可能性があります。

  • パソコンでの作成や、代筆ができる

パソコンでの作成や、代筆ができるというメリットがあります。

デメリット

  • 偽造の危険性がある

秘密証書遺言は、公証人による内容の確認が行われないため、偽造の危険性があります。そのため、遺言書の内容を第三者に知られたくない場合は、保管場所に注意するなど、偽造を防止するための対策が必要です。

  • 内容が争いになる可能性がある

秘密証書遺言は、公正証書遺言と比較して、内容の争いになる可能性が高くなります。これは、遺言書の内容が公に証明されていないため、遺言執行人や相続人同士で遺言書の有効性や内容を争う可能性があるためです。

  • 開封が必要なため、手続きが煩雑

秘密証書遺言は、公証人による検認手続きが必要です。この検認手続きでは、遺言書の存在を確認するとともに、遺言者の死亡の時期や遺言書の状態などを検証します。検認手続きには、時間と費用がかかるため、手続きが煩雑になるというデメリットがあります。

条文(民法)

第970条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

1 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。

2 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。

3 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。

自筆証書遺言保管制度

自筆証書遺言保管制度

自筆証書遺言保管制度とは、遺言者が作成した自筆証書遺言を、法務局(遺言書保管所)に預け、その原本と画像データの両方を長期間適正に保管する制度です。

要件

  • 自筆証書遺言の要件を満たすこと

自筆証書遺言保管制度は、「自筆証書遺言」を保管してもらう制度であるため、自筆証書遺言として有効であることが必要です。

  • 各種様式を満たすこと(法務省サイト参照)
  1. 用紙について
    • サイズ:A4サイズ
    • 模様等:記載した文字が読みづらくなるような模様や彩色がないもの。一般的な罫線は問題ありません。
    • 余白:必ず,最低限,上部5ミリメートル,下部10ミリメートル,左20ミリメートル,右5ミリメートルの余白をそれぞれ確保してください。
    余白が確保されていない場合や,余白に1文字でも何らかの文字等がはみ出してしまっている場合は,書き直していただかなければお預かりできません。
  2. ②片面のみに記載してください。用紙の両面に記載して作成された遺言書はお預かりできません。財産目録も同様です。
  3. ③各ページにページ番号を記載してください。ページ番号も必ず余白内に書いてください。
    例)1/2,2/2(総ページ数も分かるように記載してください。)
  4. ④複数ページある場合でも,ホチキス等で綴じないでください。
    スキャナで遺言書を読み取るため,全てのページをバラバラのまま提出いただきます(封筒も不要です。)。

さらに,本制度でお預かりするための遺言書の記載上の留意事項等があります。

  1. ①筆記具について
    遺言書は,長期間保存しますので,消えるインク等は使用せず,ボールペンや万年筆などの消えにくい筆記具を使用してください。
  2. ②遺言者の氏名は,ペンネーム等ではなく,戸籍どおりの氏名(外国籍の方は公的書類記載のとおり)を記載しなければなりません。
    ※民法上は,本人を特定できればペンネームでも問題ないとされていますが,本制度では,遺言書の保管の申請時に提出いただく添付資料等で,申請人である遺言者本人の氏名を確認した上でお預かりするため,ペンネーム等の公的資料で確認することできない表記である場合はお預かりできません。

メリット

  • 安価に預けられる

公正証書遺言に比べて、保管手数料が3,900円と安価に利用できます。

  • 法務局で保管されるため、紛失や改ざんのリスクが少ない

法務局(遺言書保管所)に原本を保管してもらえるので、改ざんされたり、隠蔽される危険を抑えることができます。

  • 家庭裁判所での検認手続きが不要

自筆証書遺言のデメリットである、検認手続きが不要となるため、検認手続きにかかる費用と時間を省くことができます。

  • 相続人に通知する制度がある

以下の場合、相続人に遺言書が保管されている旨の通知がされます。

1 遺言者の死亡後に相続人が遺言書を閲覧もしくは遺言書情報証明書の交付を受けたとき

2 あらかじめ遺言者が希望した場合に、遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を確認したとき

デメリット

  • 内容確認はしてくれない

法務局では、自筆証書遺言の要件を満たしているかのみ確認となるため、内容については、確認してくれません。そのため、せっかく預けたのに思った通りの内容にならない場合があります。

  • 氏名、住所、本籍に変更があった場合、届出が必要

自筆証書遺言保管制度は、申込時に以下の内容を登録します。

  • 遺言者の氏名、住所、本籍
  • 受遺者の氏名、住所
  • 遺言執行者の氏名、住所
  • 死亡時通知人の氏名、住所

これらの内容に変更が生じた場合、変更届を提出する必要があります。

  • 郵送や、代理人での申請ができない

本人が直接法務局へ行って申請する必要があるため、郵送や、代理人での申請ができません。

  • 事前予約が必要

遺言書保管所において行う全ての手続きについて予約が必要です。

遺言書作成セット

作成のサポートをいたします。

どの方式が最適なのか。

要件を満たしているのか。

誰が相続人になるのか。

遺留分について。

色々アドバイスしてほしい。

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遺言書作成セット

内容

  • 作成手順のご説明
  • 財産目録の作成
  • 相続人調査(戸籍謄本取得)
  • 相続人相関図(家系図)作成
  • 遺言書作成サポート

費用

15万円~